国境なき刑事弁護団

設立趣旨

 日本人旅行者5名が、オーストラリア旅行の途中立ち寄ったクワラルンプールで旅行カバンが盗まれ、新たに現地のガイドから渡されたスーツケースの中から大量のヘロインが発見されたため、薬物密輸入罪で10年以上もの間服役を余儀なくされたメルボルン事件。この事件では、被告人らは、一貫して無罪を主張していましたが、通訳人の能力等に問題があったため、自分たちの言い分が正確に伝わらないまま、判決が言い渡されました。メルボルン事件は、海外で事件に巻き込まれた場合の対応の仕方の難しさを示唆しています。その後も、海外で事件に遭遇した方々の家族らから弁護団に救援を求める連絡があとを経ちませんでした。例を挙げると、やはり麻薬の密輸入が問題となったシドニー事件、稀少昆虫を持ち出そうとしたところ、知人から渡された税関通過のための書類が偽造されたものだとして、文書偽造、同行使罪に問われたブエノスアイレス事件などです。
 国境なき刑事弁護団は、以上の事件の救援活動を経験してきた弁護士を中心に設立されました。
 これらの事件では、海外で拘束された日本人は、必ずしも語学が堪能ではなく、自分らの言い分が十分に伝わらなかったり、身柄を拘束されたその国の刑事手続の流れが理解できなかったり、弁護士とのコミニュケーションが十分でないとか、弁護士から多大な弁護費用を請求されるなど多種多様な問題がありました。
 メルボルン事件では、ジュネーブにある国際条約機関である規約人権委員会に個人通報を行いました。幸いにして、シドニー事件、ブエノスアイレス事件では、無罪判決を得ることができました。
 国境なき刑事弁護団は、グローバル時代の現在、海外に出かけ事件に巻き込まれた日本人の救援をサポートするために結成されました。もちろん、私たちは、海外での弁護士資格を持ちあわせてはいません。しかし、現地の弁護士との連絡を取り合って、日本にしかない証拠を提供するなど専門家の立場から支援し、より充実した弁護活動を実現すべくサポートすることは可能です。
 また、海外での救援支援活動には、日本国外であることからくる様々な制約があります。その中で、大きな問題の一つが支援に当たって必要となる資金の問題です。具体的には、渡航費用、宿泊費、電話代等の実費のことです。我々は、団体、個人に寄付を呼びかけ、この問題が解決できればと思っています。

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