HEADLINE ▶2015.10.23 ホームページを公開しました。
グローバル社会の現在、日本人および日本語を母語とする在日外国人が、外国で、犯罪の容疑者として逮捕され、裁判にかけられるといった例があとを経たない。その中には、知らないうちに犯罪に巻き込まれてしまった、いわゆるえん罪のケースもある。
外国の刑事手続は、日本のそれとは違うので、自分が何をされているのか分からないことも多い。何よりも、警察や裁判所に自分の身の潔白を説明しようとしても日本語が通じない。家族も友人知人も日本にいるので連絡が容易にはとれない。日本国内で、逮捕され取調を受け、裁判を受けるよりも、ずっと不安だらけである。
日本国憲法は、詳細な刑事手続に関する規定を設けている。それは、刑罰というものが、ときとして人の生命を奪い、身体を拘束する峻厳なものであるからこそ、無辜の不処罰を防ぐため徹底した適正手続を要求したことにある。この理念は、外国で犯罪に巻き込まれた日本人らにも、当然に貫かなければならない。
しかしながら、外国で犯罪に巻き込まれた日本人らを支援、救済するシステムは、制度的に確立しておらず、各地の日本領事館まかせになっているのが現状である。
われわれ弁護団は、日本国憲法その他各国の憲法及び国際人権法に基づき、外国において日本人らが、その国の正当な司法手続きを受けることを実現することを目的とし、もって刑事弁護において日本国外において自由を拘束された人たちの人間の尊厳の確保の徹底、十全な救済、支援を実現するために結成された。
- 名称
- 一般社団法人国境なき刑事弁護団
- 事務所
- 〒530-0047 大阪市北区西天満四丁目7番1号北ビル1号館602号室
- 連絡先
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TEL:06-6362-9615
FAX:06-6362-5143
- 理事
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山下潔(弁護士)
田中俊(弁護士)
- 監事
- 正木幸博(弁護士)
- 顧問
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谷口真由美(大阪国際大学准教授、全日本おばちゃん党代表代行)
新倉修(青山学院大学教授、刑事法)
前野育三(関西学院大学名誉教授、弁護士)
(敬称略 50音順)
- 事務局
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石田真美(弁護士・兵庫)
川崎真陽(弁護士)
定岡由紀子(弁護士)
田中俊(弁護士)
正木幸博(弁護士)
日本人旅行者5名が、オーストラリア旅行の途中立ち寄ったクワラルンプールで旅行カバンが盗まれ、新たに現地のガイドから渡されたスーツケースの中から大量のヘロインが発見されたため、薬物密輸入罪で10年以上もの間服役を余儀なくされたメルボルン事件。この事件では、被告人らは、一貫して無罪を主張していましたが、通訳人の能力等に問題があったため、自分たちの言い分が正確に伝わらないまま、判決が言い渡されました。メルボルン事件は、海外で事件に巻き込まれた場合の対応の仕方の難しさを示唆しています。その後も、海外で事件に遭遇した方々の家族らから弁護団に救援を求める連絡があとを経ちませんでした。例を挙げると、やはり麻薬の密輸入が問題となったシドニー事件、稀少昆虫を持ち出そうとしたところ、知人から渡された税関通過のための書類が偽造されたものだとして、文書偽造、同行使罪に問われたブエノスアイレス事件などです。
国境なき刑事弁護団は、以上の事件の救援活動を経験してきた弁護士を中心に設立されました。
これらの事件では、海外で拘束された日本人は、必ずしも語学が堪能ではなく、自分らの言い分が十分に伝わらなかったり、身柄を拘束されたその国の刑事手続の流れが理解できなかったり、弁護士とのコミニュケーションが十分でないとか、弁護士から多大な弁護費用を請求されるなど多種多様な問題がありました。
メルボルン事件では、ジュネーブにある国際条約機関である規約人権委員会に個人通報を行いました。幸いにして、シドニー事件、ブエノスアイレス事件では、無罪判決を得ることができました。
国境なき刑事弁護団は、グローバル時代の現在、海外に出かけ事件に巻き込まれた日本人の救援をサポートするために結成されました。もちろん、私たちは、海外での弁護士資格を持ちあわせてはいません。しかし、現地の弁護士との連絡を取り合って、日本にしかない証拠を提供するなど専門家の立場から支援し、より充実した弁護活動を実現すべくサポートすることは可能です。
また、海外での救援支援活動には、日本国外であることからくる様々な制約があります。その中で、大きな問題の一つが支援に当たって必要となる資金の問題です。具体的には、渡航費用、宿泊費、電話代等の実費のことです。我々は、団体、個人に寄付を呼びかけ、この問題が解決できればと思っています。
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支援活動
- 依頼者、その家族らと電話、電子メール等で連絡を取り合って、日本語での相談にのります。場合によっては、弁護士自ら現地に赴き、依頼者と接見します。
- 現地の担当弁護士と連絡を取って、弁護方針、弁護活動の状況を確認し、担当弁護士のサポートを行います。担当弁護士の活動に問題がある場合、弁護士の解任も含めて、依頼者と検討します。
- 現地の支援者、支援グループと連絡をとって、支援者、支援グループの支援活動に協力します。
- 現地の日本領事館の対応を調査し、対応が不十分な場合、邦人保護の観点から適切、迅速に対応するよう促します。
- 取調等刑事手続に関し、通訳体制が十分であるか、通訳の能力に問題がないか調査します。通訳に問題がある場合、現地の担当弁護人と連絡を取り合って、十分な通訳が受けれるよう是正を求めます。
- 場合によっては、裁判に必要な証拠を収集し、担当弁護人に証拠を提供します。
- 裁判までに、依頼者が担当弁護人と十分に打合せができているかチェックし、打合せが不十分な場合、担当弁護人にその改善を求めます。
- 現地の支援者、支援グループに対し、傍聴支援などを求めます。
- 以上の活動を支える資金するため、個人もしくは邦人、団体に、広く金銭的支援を求めます。
- 事件によって必要と判断した場合、メディア等を使って広報活動を積極的に行います。